残業しても給与が変わらない
給与明細の「みなし残業」「固定残業」について知りたい
身近にある固定残業のトラブルと対処法を解説します!
みなし残業や固定残業代って実際のところどうなの?
残業代が固定されている分、損しているのではないかと不安に思う方も多いはずです。
この記事では、固定残業代の基本的な仕組みからメリット・デメリット、そして未払い問題への対処法までを徹底解説します。
この記事を読めば、固定残業代についての疑問や不安を解消し、正当な労働条件を守るための知識が得られること間違いなしです。
さあ、安心して働くための第一歩を踏み出しましょう!
- 固定残業代とは?
- 気を付けるポイントは?
- 未払い賃金が発生した場合どうすればいい?
固定残業代とは?基本の仕組みを理解しよう
固定残業代とは?
固定残業代とは、毎月一定の残業時間を見越して支払われる固定額の残業代です。
〇〇万円(固定残業〇〇時間分)という給与明細項目があったら固定残業代に当たります。
企業は平均的な残業時間を設定して残業の有り無しに関わらず固定した残業代を毎月支払います。
設定した残業時間を超えで業務した場合は追加して残業代が支給されます。
また残業が無かった場合でも固定残業代は支給されます。
固定残業代とみなし残業代の違い
固定残業代とみなし残業代は似ていますが、重要な違いがあります。
比較項目 | 固定残業代 | みなし残業 |
定義 | 一定の残業時間分をあらかじめ給与に含める制度 | 実際の残業時間に関わらず一定額の残業代を支払う制度 |
計算方法 | 固定された残業時間を給与に含め、それを超える時間は別途支払 | 予め定められた額を支払うため、実労働時間と関係ない |
適用例 | 特定の業務量が見込まれる職種や業種 | 労働時間の記録が困難な職種や業種 |
メリット | 収入が安定する 業務が早く終了した場合でも収入は変わらない | 収入が安定する 業務が早く終了した場合でも収入は変わらない |
デメリット | 残業時間超過時に未払い問題が発生する可能性あり | 実際の労働時間と賃金が一致しない場合、労働者が不利益 |
トラブル事例 | 固定残業時間を超えた残業の未払い、固定額が最低賃金以下 | 実際の労働時間に対する適正な賃金が支払われない場合 |
固定残業代は、特定の時間数の残業代を固定給に含める制度であり、みなし残業代は実際の残業時間に関わらず一定額を支払うものです。
例えば、固定残業代が30時間と設定されている場合、30時間分の残業代が支払われますが、みなし残業代は実際の残業時間が0時間であっても支払われます。
まずは給与明細で制度を確認しましょう。
企業にも労働者にもメリットがある固定残業制度
多くの企業が固定残業代を導入しています。
ある企業では月30時間の固定残業代を設定し、それを超える残業時間については追加で残業代を支払う制度を採用しています。
このように、固定残業代を導入することで企業はコスト管理がしやすくなり、従業員も安定した収入を得られます 。
正しく運用すれば企業にも従業員にもメリットがあるんです。
固定残業代のメリットとデメリット
固定残業代のメリットとデメリット
固定残業代の最大のメリットは収入の安定です。
毎月一定の残業代が支払われるため、生活の計画が立てやすくなります。
しかし、デメリットも存在します。
固定残業代が30時間となっている労働者が40時間残業をした場合、10時間分の残業代は別途支給されます。
しかし固定分の30時間分しか支給されず10時間の残業代が未払い賃金となるケースは珍しくありません。
固定残業代をめぐるよくあるトラブル
固定残業代をめぐるトラブルとして、未払い問題や不適切な設定が挙げられます。
超過分が未払いとなるトラブル
「いくら残業しても30時間の固定残業代しか支給されない」という場合の企業と労働者の認識の違い(給与30万円で入社したケース)
【労働者の認識】:残業が30時間を超えたら超過した分は別途支給される
【企業の認識】30時間分の固定残業代を支給しているからいくら残業してもOK、追加支給もなし
固定残業代が実際の労働時間を反映していない場合、労働者は未払い残業代を請求することができます。
当然30時間を超えたら別途残業代が支給されますからね!
基本給と固定残業代があいまいで起こるトラブル
「入社したら残業代がつかない」という場合の企業と労働者の認識の違い(給与30万円で入社したケース)
【労働者の認識】:30万円+残業代
【企業の認識】20万円+10万円(固定残業)
企業が募集や労働契約の段階で基本給と固定残業代をあいまいにしてトラブルになるケースがあります。
入社時によく確認しましょう
固定残業代の未払い問題と対処法
固定残業代の適正な設定方法
適正な固定残業代を設定するには、基本給と残業代を明確に分けることが重要です。
また、固定残業時間を超過した場合には追加で残業代を支払う必要があります。
例えば、月30時間の固定残業代を設定する場合、その時間を超える残業が発生した場合には、別途残業代を支払う必要があります。
このように適正な設定を行うことで、労使間のトラブルを未然に防ぐことができます。
未払い残業代を請求する方法
未払い残業代を請求するには、まず証拠を収集することが重要です。
労働時間の記録や給与明細を保存し、未払い分を確認します。
その後、労働基準監督署に相談し、適切な手続きを進めます。
具体例として、ある労働者が未払い残業代を請求する際、労働時間の記録をもとに労働基準監督署に訴え出ました。
その結果、企業は未払い分の残業代を支払うこととなりました。
固定残業代に関する裁判事例
固定残業代を巡る裁判事例をいくつか紹介します。
定額残業を超えた残業代の未払いについて争われた裁判
大和ハウス工業事件(2014年)
裁判所は、企業側に未払いの残業代を支払うよう命じました。
これは、固定残業代制度を適用する場合でも、実際に働いた時間に対して適正な賃金を支払う義務があることを再確認する判決となりました。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券事件(2015年)
裁判所は、企業側に未払い残業代を支払うよう命じました。
企業は固定残業時間を超えた労働に対しても正当な対価を支払う必要があるとの判断が示されました。
固定残業代が残業代の上限ではないことをよく理解しましょう。
定額残業が基本給に含まれていたことを争った裁判
日本ヒューレット・パッカード事件(2015年)
契約書に明確な記載がなかったため、定額残業代の有効性が認められず、労働者の請求が認められました。
ソフトバンク事件(2016年)
基本給に定額残業代が明確に分けられておらず、未払い分の残業代の支払いが命じられました。
基本給と固定残業は別になっていないと入社後にトラブルが発生します。
厚生労働省の調査によると1年間で1,000を超える企業に未払い賃金是正指導を行い、6万人以上の方に未払い賃金が支給されています。
【令和3年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果のポイント】
厚生労働省:監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度)
(1) 是正企業数 1,069 企業(前年度比 7企業の増) うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、115 企業(同 3企業の増) (2) 対象労働者数 6万 4,968 人(同 427 人の減) (3) 支払われた割増賃金合計額 65 億 781 万円(同 4億 7,833 万円の減) (4) 支払われた割増賃金の平均額は、1 企業当たり 609 万円、労働者 1 人当たり 10 万円
トラブルの多さに驚きますね。
そしてまだまだ表面化していないトラブルがたくさんありそうですね。
固定残業代の理解と対処法のまとめ
固定残業代について理解を深め、未払い問題に対処するための知識を身につけることは、労働者にとって重要です。
固定残業代制度は、正しく運用されれば企業と労働者双方にメリットがありますが、適切な運用がされていない場合、トラブルに発展することがあります。
改めて労働者として固定残業代に関する基本的なポイントと対処法をまとめます。
固定残業代の基本
- 固定残業代とは:毎月一定の残業時間を見越して支払われる固定額の残業代です。
- メリットとデメリット:収入の安定や残業が短くても固定収入を得ることができる一方、未払い問題が発生する可能性があります。
固定残業代の問題点
- 労働時間の把握が必要:労働時間を把握しておかないと、既定の残業時間を超過しているかが分からなくなります。
- 未払い問題:企業の時間管理があいまいだった場合、超過分の未払い残業代が発生するリスクがあります。
固定残業代の対処法
- 証拠の収集:未払い残業代を請求するには、労働時間の記録や給与明細を保存し、未払い分を確認します。
- 労働基準監督署への相談:未払い分が確認できたら、労働基準監督署に相談し、適切な手続きを進めます。
- 裁判事例の確認:固定残業代を巡る裁判事例を参考に、自身の状況が法的にどのように扱われるかを把握することが重要です。
皆さんへのアドバイス
- 契約内容を確認する:労働契約書に固定残業代が明記されているか確認し、具体的な残業時間と賃金が明確に記載されていることを確認しましょう。
- 適正な賃金を受け取る:固定残業代が最低賃金を下回らないか確認し、残業時間を超過した場合の追加賃金が支払われているかを確認しましょう。
- 証拠を保存する:残業時間の記録や給与明細を保存し、必要に応じて未払い残業代を請求できるよう準備しておきましょう。
- 相談窓口を利用する:未払い残業代の疑いがある場合は、労働基準監督署に相談することをお勧めします。
固定残業代制度を理解し、正しく対処することで、労働者としての権利を守り、健全な労働環境を維持することができます。
適切な知識と対策を持つことが、トラブルを未然に防ぐ第一歩です。
トラブルが発生しても正しい対処を行いましょう。
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