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早く出社しなければならない?労働基準法に基づく対策法と労働者が知っておくべき権利とは?

始業前30分には出社するようになっています…

早く出勤した分給与は増えないのでしょうか?

社労士

「就業時間前の出勤」について解説します。

始業時間前の出社を強制されていませんか?

この記事では、終業時間前の早出勤務の問題とその解決策を分かりやすく解説します。

労働基準法の基本ルールから、早出勤務が労働時間に含まれる条件、そして具体的な対策まで労働者が知っておくべき情報を網羅しました。

労働者としての権利を守り、公正な労働条件を確保するための実践的なアドバイスが満載です。

このような疑問にお答えします
  • 就業時間前に出勤するのは必要?
  • 法律やルールはあるの?
  • 納得がいかない場合どうすればいい?
目次

始業時間前の出社に関する基本ルール

労働基準法における労働時間の定義

労働基準法では、始業時間前の出社も労働時間に含まれる可能性があります。

労働基準法第32条では、労働時間を「使用者の指揮命令の下に置かれている時間」と定義しています。

つまり、会社の命令で早く出社することが義務付けられている場合、その時間も労働時間として認められます。

命令ではなく自主的に出社している場合は労働時間とは認められません。

例えば、始業時間が9時であるにもかかわらず、上司の指示で8時30分に出社して仕事の準備をするよう求められる場合、その30分も労働時間と見なされます。

労働基準法に基づけば、始業時間前の出社が命令されている場合、それは労働時間に含まれ賃金が支払われます。

厚生労働省によると以下のようにはっきり定義されています。

・労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいいます。
使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は、労働時間に該当します。
参照:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督リーフレットより

労働時間に該当するか?争われた事件と判例

社労士

判例を知ることでより定義が理解できます。

着替え時間が労働時間に含まれるかが争点となった「三菱重工長崎造船所事件」

請求内容: 労働者が作業前に着替えや散水などの準備行為を行う時間が労働時間に含まれるかどうかについての請求がなされました。

② 争点: 着替えや散水などの準備行為が「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」として労働基準法上の労働時間に該当するかが争点でした。

③ 判決のポイント: 最高裁判所は、労働者が事業所内で準備行為を行うことを使用者から義務付けられている場合、特段の事情がない限り、これらの行為は使用者の指揮命令下に置かれたものと評価でき、社会通念上必要と認められる限り、労働基準法上の労働時間に該当すると判断しました。

社労士

使用者から義務付けられる=労働時間ですね。

社内行事や研修などが労働時間に該当するかが争点となった「「八尾自動車興産事件」

請求内容: この事件では、会社の従業員が参加する趣味の会や専門委員会、研修会などの活動が労働時間に該当するかどうかが争われました。

② 争点: 趣味の会の活動が自由参加であること、専門委員会が全従業員が配属されるものであること、研修会が業務に不利益が生じることから業務として行われたとして労働時間と認められるかが争点でした。

③ 判決のポイント: 大阪地方裁判所は、趣味の会は自由参加であるため業務として行われたものではないとして労働時間に該当しないと判断しました。一方で、専門委員会と研修会は、従業員が参加することが事実上強制されていたため、これらの活動に要した時間は労働時間に該当すると判断しました。

社労士

任意=私用時間です。強制=労働時間と考えられますね。

所定労働時間外に行われた業務が争点となった「大林ファシリティーズ事件」

請求内容: マンションの住み込み管理員が、所定労働時間外及び休日に行った業務に対して、時間外労働及び休日労働に対する割増賃金の支払いを請求しました。

② 争点: 所定労働時間外及び休日に行われた業務が、労働基準法上の労働時間に該当するかどうかが争点となりました。特に、実際に作業をしていない「不活動時間」も労働時間に含まれるかが問題でした。

③ 判決のポイント: 最高裁判所は、管理員が所定労働時間外に断続的な業務に従事していた場合、不活動時間も含めて、管理員が使用者の指揮命令下に置かれていた時間は労働基準法上の労働時間に当たると判断しました。また、土曜日については、会社から1人で業務を処理するよう指示されていたため、2名のうち1名のみが業務に従事したものとして労働時間を算定するのが相当であるとされました。

社労士

指揮命令下に置かれていた=労働時間と判断されます。

始業時間前の出社が労働時間に含まれる条件

始業時間前の出社が労働時間に含まれるためには、使用者の指示や命令が必要です。

労働基準法は、使用者の指揮命令下にある時間を労働時間と定めています。

したがって、単なる慣例や自主的な出社ではなく、明確な指示や命令が存在することが必要です。

例えば、業務命令として朝礼や会議が始業前に設定されている場合、その時間は労働時間に含まれるべきです。

使用者の明確な指示や命令がある場合、始業時間前の出社も労働時間に含まれるため、適切な賃金支払いが求められます。

労働基準法が規定する残業代の支払い義務

労働基準法では、始業時間前の出社が労働時間に含まれる場合、残業代の支払いが義務付けられています。

労働基準法第37条は、法定労働時間を超える労働に対して割増賃金(残業代)の支払いを義務付けています。

始業前の労働が法定労働時間を超える場合、その分の残業代を支払う必要があります。

例えば、毎日30分早く出社している場合、1週間で2.5時間の残業となり、その時間に対して割増賃金が支払われるべきです。

労働基準法に従い、始業時間前の出社が労働時間に含まれる場合は、残業代の支払いが求められます。

始業前出社の慣例とその問題点

始業前の出社が求められる理由

始業前の出社が求められる理由は、主に業務効率化や準備作業のためです。

多くの企業では、業務開始前に必要な準備作業や情報共有を行うために、始業前の出社が慣例化しています。

しかし、これが労働時間として認められない場合、無償労働となります。

例えば、始業前に行う朝礼やメールチェック、資料準備などは業務の一環であり、本来は労働時間としてカウントされるべきです。

業務効率化のために始業前の出社が求められることが多いですが、これらの時間は適切に労働時間として認められる必要があります。

無償労働の実態とその影響

始業前の無償労働は、労働者のモチベーション低下や法的問題を引き起こします。

労働者が労働時間外に業務を行い、賃金が支払われない場合、不公平感や疲労が蓄積し、結果的に労働意欲が低下します。また、法的には労働基準法違反となります。

例えば、毎日30分早く出社し、賃金が支払われない場合、月に10時間以上の無償労働となり、労働者に大きな負担がかかります。

無償労働は労働者にとって不利益が多く、法的にも問題があるため、適切な対策が必要です。

慣例で見逃されるコンプライアンス

長い期間就業前の早出出勤をする会社はそれが当たり前になっているので誰も問題に気が付きません。

しかし早出出勤が残業代の対象となっていない場合はコンプライアンス違反となっている状態です。

今の時代コンプライアンス違反は一刻も早く是正されるべき問題でしょう。

社風・慣例なのでしょうがない?

個人的には我慢できる範囲で早出出勤の慣例に従うほうが良いと考えます。

企業文化や慣例を尊重することで人間関係や職場環境がうまくいくからです。

社労士

ただし許せる範囲であればの話です。

毎日1時間以上早く出勤して業務をしているような状態ではいくら慣例があっても私は続けるのは難しいでしょう。

毎日長期間ストレスにさらされることは良くありません。

以下いずれかの対応を検討しましょう。

  • 会社(上司)と交渉して就業前の早出出勤を回避する
  • 会社を退職して転職する

早出勤務を回避するための具体的な対策

会社規則や就業規則の確認

会社の就業規則や労働契約書を確認し、早出勤務に関する規定を明確に理解することが重要です。

就業規則に「始業前の出社は労働時間に含む」と明記されている場合、その時間に対する賃金を請求する正当な根拠となります。

上司や人事部への適切な相談

早出勤務に関する問題は上司や人事部に適切に相談し、正式な手続きを通じて解決を図るべきです。

毎日30分早く出社している事実を上司に報告し、正式に労働時間として認めてもらうように交渉することが有効です。

公的機関(労働局・労基署)や労働組合の活用

会社内で解決できない場合は公的機関(労働局・労基署)や労働組合に相談し、法的な助言やサポートを受けることも考慮しましょう。

相談先対応内容
都道府県労働局とりあえず相談したい
労働基準監督署労働基準法違反を解決したい
労働組合労働基準法違反を解決したい(民間団体)
弁護士法的に訴え解決したい
社労士

まずは労働局に相談するのが良いでしょう。
公的機関なので無料で対応してもらえます。

お住まいの各エリアに労働局の総合労働相談コーナーがありますが、電話相談窓口も利用できます。

労働条件相談ほっとライン:0120-811-610

社労士

まずは電話で相談してみましょう。

書面での確認と記録の重要性

書面での確認と記録を徹底することで、交渉結果や労働条件を正式な書面で残し、双方がサインすることで将来的なトラブルを防ぐことができます。

早出出勤の改善が難しい場合は転職を検討しよう

早出出勤の改善が難しい場合は、退職して他の企業に転職することも選択肢の一つです。

企業文化や慣例が深く根付いている場合、個人の力だけで労働環境を改善するのは難しいことがあります。

労働基準法に違反している状況が続く中で働き続けることは、長期的には精神的にも肉体的にも大きな負担となります。

転職したら新しい職場では労働時間がしっかりと守られ、働きやすい環境でのびのびと仕事ができるようになる事例は多々あります。

社労士

私も前職は早出サービス残業が多く、悩んだ末に転職しましたが、現在はしっかり残業代が支給されて納得して働いています。

早出出勤の問題が改善されない場合、退職して他の企業に転職することを検討しましょう。

転職によってより良い労働環境を手に入れることで、健康と仕事の満足度を高めることができます。

社労士

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社風や慣例に従うか、転職を考えるか?悩む労働者へのアドバイス

社風や慣例に従うか、転職を考えるかは個人の判断によりますが、労働者としての権利を守るためには慎重な選択が必要です。

企業文化や慣例が深く根付いている職場では、その改善を図るのは困難です。

労働基準法に反する状況が続く場合、精神的・肉体的な負担が増す可能性があります。

一方で、長年の慣例に従って業務を行うことが当たり前とされる職場も少なくありません。

状況を改善するために多大な労力が必要となる場合、より良い労働環境を求めて転職することも有力な選択肢です。

私個人の経験談ですが、早出出勤が常態化している職場で働き続けていましたが、状況が改善されないため転職を選択しました。

その結果、新しい職場では労働時間が守られ、健康的で満足のいく働き方ができるようになりました。

社風や慣例に従うことが難しいと感じる場合は、自分の健康と仕事の満足度を優先しましょう。

転職活動を通じて、自分に合った職場を見つけることができるかもしれません。

改善を試みる場合は、労働基準法に基づいた正当な主張を行い、必要な場合は外部機関のサポートを受けることをお勧めします。

社風や慣例に従うか、転職するかを決める際には、労働環境の現状と自身の健康、満足度を総合的に考慮することが重要です。

どちらの選択をするにしても、自分の権利を守り、健全な働き方を実現するための行動を取りましょう。

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